高給をとっていそうなエグゼクティブたちが女性であり、彼女たちがみだらな視線でうっとりと見つめているのが、建築現場で働いている逞しい男性だという点である。彼は上半身をあらわにし、休憩時間、ダイエット・コークを美味しそうに飲んでいる トップ画像

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理想の男(ひと)

本表紙
サイモン・アンドレアエ/沢木あさみ=訳

理想の男(ひと)

忙しいオフィスの午前11時半。きちんとした身なりのエグゼクティブたちが机につき、郵便物をみたり、コンピュータのキーボードを叩いたり、電話で話したりしている。

 何もかもクールで穏やか、落ち着いているように見える。ところが突然、みな仕事が手につかなくなる。オフィスの中をさざなみが走る。エグゼクティブたちが囁き合う。くすっと笑ったり、当てこすりを言い合ったりしている。

 みな窓に駆け寄り、首を伸ばす。よく日に焼けたたくましい肉体を剥き出しにした男性をみつめようと、その男がドリンクの缶を開け、美味しそうにそれを飲み干すのを、窓際の監修たちはうっとりと見つめてため息をつく。

 どの目にもゴージャスな肉体の動きをひとつ残らず追っている。セクシーな気分が、みなぎっている。

 この大評判となったテレビ・コマーシャルのオチはもちろん、高給をとっていそうなエグゼクティブたちが女性であり、彼女たちがみだらな視線でうっとりと見つめているのが、建築現場で働いている逞しい男性だという点である。

 彼は上半身をあらわにし、休憩時間、ダイエット・コークを美味しそうに飲んでいる。このコマーシャルは、セクシーなカリフォルニアの女の子たちが缶をうっとりとなでんでいるといったありがちなコマーシャルの逆バージョンで、女性たちも金を稼ぎ自分でパートナーを選ぶという新しい世界の登場を反映している。

 このコマーシャルを、つまらないという人たちもいる。決まりきったパターンを、少し変えたに過ぎないというのである。あるいは、現実に未だここまで至っていない、やはり建築現場で働く肉体労働者はまだ女性を追いかける側だとだという人々もいる。

 だが、このコマーシャルは当たった。それはきっと、世界中の人々が気づき始めた女性の性衝動に関する真実に触れているからであろう。

 このコマーシャルに登場する女性たちは、彼女たちのアイドルについて多くを知らない。知ってることも、すべてがボジティブなわけではない。働き者のようだが、建築現場で働く男なら金を山ほど持っているとは思えない。

 彼の出身地も知らなければ、どんな人なのか、これからどうなるのかもわからない。わかっているのは外見だけで。なのに女性たちは、うっとりしているのである。

 女たちはハンサムな男に惹かれる。たとえよく解らないが相手でも、外見が良ければ魅せられるのである。当たり前だと思われるかもしれない。だが、これは繰り返しておいたほうがいい。

 なぜならこのあまりに明白な事実を、進化論の思想家や科学者は通り一遍にしか考えてこなかったからである。

ハンサムな男たちはその長所を子どもに伝える

それはすなわち、繁殖をめぐる競争を優位な立場からスタートできることを意味する。後ろの方を見るように、頑丈な顎や広い肩、豊かな髪や引き締まった肉体という伝統的な美男の要素は、健康で強い遺伝子を持っている証でもある。

 それでも女性にとって異性の外見は、男性ほど重要でないようであるし、女性は外見以外の要素を重んじることも事実である。ダグラス・ケンリックの調査でも、女性が男性ほど外見にこだわらないことが解っている。それどころか、あまり美形でない男性のほうが却って魅力を感じることさえあるのである。
 もちろん、その男性が他に提供してくれるものを持っていればだが。

 こういう逸話もある。何年か前、俳優のダスティン・ホフマンはレストランで静かに一人食事を取っていた。そしてふと、まわりの女性客から注目を浴びているらしいことに気づいた。

 女性たちは彼を見つめ、囁いたり笑い声を立てたりしている。ホフマンは居心地が悪くなってきた。やがて彼女たちは、彼に近づいてサインをねだり始めた。デートに誘う女性さえいた。

 我慢ならなくなってきたホフマンは、女性たちの方を向いてうんざりしたような顔してみせ、こう言った。「まったく君たち、こっちが必要だったときいったいどこにいたんだい?」

 ホフマンはいわゆる美形ではない。上半身になってダイエット。コークのモデルと並べば、見劣りがするだろう。ただホフマンは有名人である。だから、容貌以外に望ましい資質をたくさん持っている。

セクシャル・ファンタジーに関するグレン・ウィルソンの研究では

イギリス人のセクシャル・ファンタジーに関するグレン・ウィルソンの研究では、男性はだいたい、複数でのセックスのファンタジーが好きだということがわかった。それに比べて女性の夢見るセックスは千差万別だが、中でも有名人との一対一のセックスは人気が高い。

 現代における有名人は、その昔の村の酋長や腕のいい狩人と同じように、平凡な男より多くの食べ物と保護を女の子ども与える力がある。だから進化の過程で、自分の文化の中で地位の高い男性を見分ける能力に長けた女性が生き残ってきたのかもしれない。
 見分け、そして、そういう男に欲望を感じるのである。

 地位が高く豊かな男の目安は、名声だけではない。1986年、アメリカ人心理学者エリザベス・ヒルは学生たちのアンケートを行った。地位の高い男性がどのような服装をし、地位の低い男性がどのようなものを身にまとうと思うかというアンケートであ。

 地位の高い男性が身に着けるものの例としては、高級なスーツやポロシャツ、デザイナー・ジンズ、高価な時計などが挙がった。地位の低い男性に関しては、ごく普通のジーンズやタンクトップ、Tシャツなどが挙がった。

それからヒルは、何人かの男性に両方の服装をしてもらい写真にとると、それを別々のグループの女子学生に見せ、それぞれどのくらい魅力的だと思うか点数をつけてもらった。
全体的に見て、同じ人物でも地位の高い男性のする服装をしているときのほうが点数は高かった。

 だが女性を惹きつけるのは、ステータス・シンボルやそれにまつわる富だけではない。そういった地位を将来勝ち取れそうな人柄も、女性にとっては大きな魅力である。たいていの文化の中で女性は、男性がどのような地位を勝ち取る前に相手を決めなくてはならない。
 その結果、相手の将来性を見ぬくことも大切になってくるのである。

 将来性を表す資質がどんなもので、それが女性の欲望とどのような関連があるかを探るために、心理学者のマィケル・ウィーダーマンは、1992年1月から6月にかけてアメリカの定期刊行物に載った個人広告を調べた。

パートナーを見つけるためにお金を払う媒体でなら

男も女も相手に求め自分のどこを強調しようとしているのか、素直に表現するだろうと思ったのである。

 人々が相手に求めている条件を集めたカテゴリー別に分けてみると、女性は男性の10倍も、地位の高さと豊かさを象徴する言葉(会社経営、高級な趣味の持ち主、成功した、豊か、暮らし向きがいい、経済的に余裕がある)に魅力を感じることが解った。

 そして、女性が好きな言葉はこれだけではない。野心的、勤勉、キャリア上志向、それに大卒といった言葉も、かなり女性を惹きつけることが解った。将来地位と富を手にする可能性を感じさせる言葉だからである。

 このウィーダーマンの研究結果を裏付ける調査は、時代や場所を超えて行われている。アメリカの定期刊行物『ザ・ジャーナル・オブ。ホーム・エコノミックス』は、1940年代と50年代、そして60年代に若者の性的傾向について調査を行った。

 その結果、どの時代にも女性がデートで相手に経済力があればいいと望んでいる――必ずしも必要不可欠とはしていないが――ことがわかった。ダグラス・ケンリックは、どれくらいの知性や魅力やその他を異性に求めているかを調査し、女性が男性よりずっと相手の経済力に重きを置きことを確かめている。

ディヴィッド・バスは37の地域における1万人を対象に行った。伴侶選びの基準に関する調査で

女性はどこでも男性の2倍の経済力を気にするという結果を得ている。

 これは進化論の結果ではないという研究者もいる。女性が相手に経済力を望むのは、多くの文化の中で女性自身には金を稼ぐ力が与えられてこなかったからだと。だが女性は、たとえ自分に経済力があろうと相手にも稼ぐことを求める。

 現代ではいまだかつてないほど多くの女性が自立し、自分で金を稼いでいるが、女性は相変わらずよりたくさんのものを与えてくれる男性を求める。1993年、アメリカの新婚夫婦を対象に行われた調査では、経済力のある花嫁ほど夫の経済力を重視するという結果が出ている。バスの同寮、心理学者のブルース・エリスは伴侶選びの掟をこのようにまとめている。

「女性は富や権力、社会的地位があればあるほど、自分に相応しい男しか相手にしない」
 つづく 13、 満足の保証 
 大きく息を吸って、彼女は丸みを帯びたお腹をなでた。「もしこれからあなたが逃げようとするのなら、あなたは私とこの子、二人を失うことになるのよ。これが最後のチャンスよ。一緒に愛情をもって育てる気がないのなら、今やめにした方がいいわ。今ならあなたなしでもなんとかやっていけるだろうから」